世界青春放浪記 僕が11カ国語を話す理由/ピーター・フランクル [時々読書]
数学者、ピーター・フランクルの半生を振り返ったエッセイです。
元々ハンガリー人だった著者が、当時共産主義真っ只中だったハンガリーから亡命という選択をした過程を、
青春ど真ん中だった若気の至り(?)と織り交ぜて綴られています。
サブタイトルにあるとおり、11カ国語を話すまでに至った経緯は、それなりに過酷だったようです。
話すというよりは、話せなければ生きていけないという情況だったように思います。
ただ、自分らしく自由に生きたい。
誰でも自然と思う事ですし、本当に民主的な国であれば守られている権利ですが、
世の中そうも言っていられない時代、風潮というものは存在するものです。
そんな空気が若かりし著者には耐えられなかったのではないでしょうか。
家族を残して思い切って亡命したのは、若さ故だと思いますが……。
それと改めて思う事は、
ハンガリー人はとっても理屈っぽい人が多い……ような気がします。
良いように捉えれば、それは学者気質な人が多いと言えますし、
方や妙に頑固で偏屈と捉える事も出来るような気がします。
普段あんまり身近に感じないハンガリーという国ですが、一個人の視点を通してシビアな現実を垣間見る事が出来る本です。
ヘーゲル・大人のなりかた/西研 [時々読書]
珍しく読破するのに一週間もかかった本です。
別にページ数がそんなの多いわけではありません。
ただ、読むと段々眠たくなってしまう本でした。
特に電車の揺れには脳波(?)がジャストフィットするようです。
ともあれ、ヘーゲル哲学について著者の解釈と当時の時代背景等を折りませながら紹介されています。
そもそもヘーゲルって誰なのさ?
ヘーゲル哲学って言うけれど、原点って一体どこなのさ?
とういうような点を、短く端的にまとめてあるので、私のような哲学素人であり、
ヘーゲルが誰なのかすらロクに知らないような人でも、割とあっさり読むことができます。
ただ、比較対象にカントや他の哲学者が出てくるので、
そちら方面の知識も持ち合わせている方が、より分かりやすいのではないかと思います。
読めば、何だかナルホドと思うのです。
賛成するか、否かという問題は、よそに置いておいて、という感じです。
フライトアテンダントのちっとも優雅じゃない生活/レネ・フォス(佐竹史子=訳) [時々読書]
フライトアテンダントのちっとも優雅じゃない生活 (ヴィレッジブックス)
- 作者: レネ フォス
- 出版社/メーカー: ソニーマガジンズ
- 発売日: 2004/06
- メディア: 文庫
嘘偽りの無いノンフィクション、との事です。
当機にご搭乗のみなさま、笑いすぎにご注意ください。
まるで最近流行のアメリカンホームドラマか映画のタイトルのようです。
無駄に長い……(笑)
アメリカのとある航空会社に勤めるフライトアテンダントの体験記です。
はっきり言って、フライトアテンダントのお仕事はエゲツナイと思わざるを得ない日常でした。
現実は、小説よりも奇なり、というやつです。
現在お付き合いしているパイロットが、実はたまたま同じ便に勤務した先輩アテンダントの元旦那って。
あるんですか、そんな事。
過酷な勤務続きで、とうとう乗客に対して鬼軍曹さながらにキレまくるキャビンアテンダントって、いいんですか。
ラジオのDJさながらに、どうでもいい事までひたすら機内アナウンスしまくって、
とうとう副操縦士に殺害()されて大人しくなる機長って、大丈夫なんですか。
方や、乗客のマナーのなってなさについても、全くオブラートに包む事無く述べられています。
人の振り見て、我が振りなおせですね。
同じ乗客だったとしたら、私もイヤだ。
と思うようなお客さんについても列挙に暇がありません。
どんなお仕事もそうですが、
ある意味、思い切った開き直りと、相当の精神力がないと勤まらない事なんだと思います。
一見悪口をまくし立てているだけのような著書ですが、
それでも著者はフライトアテンダントを辞めません。
何だかんだと、続けていれば自分の仕事に誇りなり、責任なりを感じるようになるんだろうなと思います。
日々奮闘する仕事思考、脱帽です、ある意味。
特に最後の章に急遽付け足された9.11の下りは、
アメリカ人としての著者の等身大の当時の情況と心情を、ありありと感じさせます。
ほんの数ページなんですけれども。
[無意識]の心理学 心を支配する「意識下」の不思議世界/匠英一 [時々読書]
「無意識」の心理学―心を支配する「意識下」の不思議世界 (ON SELECT)
- 作者:
- 出版社/メーカー: 雄鶏社
- 発売日: 1995/06
- メディア: 単行本
何故かうちの本棚にあった本です。
私自身が買った覚えは無いので、恐らくは両親のどちらかの持ち物だと思われます。
とか言いながら、実は無意識に自分で買っていたりして?
この本では、あらゆる無意識の状態で起こる人間の行動や心理状態を、諸外国での実験や歴史的背景にまで言及しながら紹介しています。
やれ、集団ヒステリーやら、
サブリミナル効果や、
一種神がかり的なマインドコントロールやら、
歴史的な犯罪に語られる面から、
個人の日常生活の中まで、
え、これも無意識を利用しているんですか、そうですか。
という感じの本です。
雑学程度に知っていれば、ふとした時に冷静な判断ができるお手伝いになるかも?
なかなか面白い本でした。
ルート66をゆく アメリカの「保守」を訪ねて/松尾理也 [時々読書]
ルート66といえば、ディズニー映画「カーズ」でも題材にされた、アメリカの国道で、
アメリカンドリームの象徴みたいな感じで、
一度は走りたい憧れの道、
走れば何故か、どことなくメランコリックに浸れる道、
みたいな漠然としたイメージしか持っていなかったのですが、
この本では、アメリカ保守派を繋ぐ、象徴的なルートとして広い合衆国を横断していきます。
旅行や紀行というよりは、保守の歴史を一つ一つ垣間見ていく感じです。
そして、ノーテンキな私にとっては意外だったのは、この一節です。
ルート66は「母なる道」だ。「母なる道」とは何か。
広大で人間を寄せ付けない荒野に点在して住み、身を切られるような寂しさを抱えた人々が回帰する場所の事である。(中略)
ルート66は逃亡する人々の道だ。
土埃に覆われた荒廃する土地から、咆哮するトラクターと縮小する所有権から、北へ向かってゆっくりと侵攻してくる砂漠から、逃げ出してきた難民たちの道だ。
の下りです。
多民族の大国家が抱えるシビアな歴史と現状を、垣間見られるような一文です。
ニセモノ師たち/中島誠之助 [時々読書]
お宝鑑定団でもお馴染み、骨董鑑定士の中島誠之助さんの本です。
骨董品については、はっきり言ってよく分かりませんが、
美術館なんかの特別展でやってくる焼き物や、
瀬戸物や西洋食器は大好きです。
この本では、著者が触れてきた数々の名品についての見解や、
テレビ等で携わってきたお仕事の話や、
自身の骨董買い物について、色々書かれています。
ホンモノがあれば、当然世の中にはニセモノも溢れているわけで、
そういた物の見分け方やら、
そもそも何故ニモセノが出現するのか、とか、
そういう物に引っかかってしまう人たちの特徴とか、
或いは、修復師たちの数々のワザとか、
多岐にわたって語られています。
骨董の世界がとても奥深い物である事はよく分かりました。
そもそも、骨董品に値段を付ける、更にはそれを売買して儲けるなんて事を考える事態、
お粗末な話みたいです。
その人が、良いと思えば、その品は良い。
要は思い入れの問題みたいです。
今持っているものが、ホンモノかニセモノかという事を追及するよりも、それを大事にする方がよっぽど大切なんですね。
祖国とは国語/藤原正彦 [時々読書]
国家の根幹は、国語教育にかかっている。
論理性、情緒性、語学力等々、必要になるのは絶対的な国語力。
外国語が喋られる事が偉いのではない、
その外国語をもってして、自分が何を伝えたいのか。
伝達能力を鍛える為の、国語力であり、外国語という手段である。
ゆとり教育に警鐘を鳴らし、
そこから見えてくる個人としての弊害や、国家としての深刻な問題点を指摘しています。
これは国際派の数学者としての見解。
かと思えば、数学者だからこそ(?)こんな会話が家庭内で生まれるのか、
ユーモラスでもあり、ただの屁理屈じゃん、と思うようなある意味知的な家族の会話。
よそ様にとっては、別にどうでもいいですよ~な砕けた語り口の軽い草稿も載っています。
パラパラと読める本なので、時間が空いた時や通勤通学の途中に読むと楽しいかもしれません。
ロシアは今日も荒れ模様/米原万里 [時々読書]
ロシア語の通訳者として活躍する著者の、仕事を通して経験した国際政治の舞台裏を綴った本です。
大きくはロシアを取り巻く国際情勢から、
少しフォーカスして歴史的背景と、それに伴う国民感情やら国民性、
更にクローズアップしていくと、歴代のロシア(ソ連)大統領の人物像にまで、
読みやすいタッチで、アタックしています。
そして、ロシアにウォトカは欠かせない。
ウォトカ無くして、ロシア(ソ連)は語れない。
諺や格言も、ウォトカ引用率が、異様に高い国民性。
「世の中に醜女はいない。ウォトカが足りないだけだ」
そして、今は改善されたのか。
日本人には考えられない、おぞましきトイレ事情。
引用という形で活字になって語られるその一部ですが、はっきり言って挿絵が無かった事に感謝します。
想像するだけで、ご飯がまったく喉を通らなくなります……。
ただ、雑学として読めるタッチの本なので、とても面白いです。
ゴルバチョフ大統領や、エリツィン大統領が現役だった頃、私はまだ小学生でした。
社会の教科書がソ連から、ロシアに表記が変わった正にその辺りで、両方の教科書を今でも大事にとっています(笑)
当時はテレビを見ても、ゴルバチョフ大統領はオデコに赤いキズがある。
くらいの認識しかなく、演説の内容なんかチンプンカンプンでしたが、
どういう情勢で、どうしてああなったのか、を今読んでみてナルホドと思うのです。
オランダ式節約セラピー/オーツ キョーコ [時々読書]
オランダ人はケチ。
世間一般的なオランダ人のイメージですが、
それを生活術(=節約)と捉えた場合、どれ程ストイックに日々実行しているのか。
生活者の視点から、簡単に列挙されています。
ズボンの膝のスリキレは、お尻のポケットで繕う。
ポケットを使い切ってしまってピンチ!
お父さんのズボンのポケットを使ったらいい! というオバちゃんたちの井戸端会議。
ナイスアイディアと、採用してしまうストイック加減。
お鍋は親子4世代に渡って使い続ける物持ちのよさ。
ボロボロの革サンダルを、10年間履き続ける事も、普通(It's normal)。
列には並ばないけれど、順番は厳守するのが、普通(It's normal)。
律儀に列に並んだ人が、次に進もうとすると、
その場にいる全員が一斉に「待った」をかけるのが、普通(It's normal)。
買い替え品を、定価で買って、口論に発展する流れも普通(It's normal)。
旅行先では、「オランダから来た」というだけで、
店主は全く商売っ気をなくして見向きもしなくなるという。
(見るだけで買わない=オランダ人という認識ができているらしい)
何でもかんでも、「普通(It's normal)」精神で貫く大らかな人種のようです。
オランダ人という人種は。
そうかと思えば、マンホールから水が噴出しても(下水管破裂?)、これもまた普通(It's normal)。
カフェでお勘定したくても、店員さんが大忙しでなかなかお会計してもらえず、
テーブルに代金放置して席を立つのも普通(It's normal)。
でも、そんな放置金を、ドサクサに紛れて泥棒する人は、アブノーマル。
あ、そこはそうなんだ(笑)
普通(It's normal)じゃないんだ。
最高に笑える人生/曽野綾子 [時々読書]
文庫本のオビに、毒舌エッセイと書かれてありました。
笑えてきませんか、世の中あまりに可笑しくて。
そう書いてあって、トップカバーとのギャップがあります(笑)
医療現場や、やたらお金のかかる選挙制度等、数々の矛盾点を率直に列挙しています。
国内だけでなく、その視線の先は世界にも向けられています。
著者本人がクリスチャンであることから、
一般人よりも縁あって、様々な海外の貧困地域や紛争地域の、様々な差別社会を目の当たりにし、
その国に生きる人たちの、日本人には考えられないシビアな現実が、そこにはあります。
差別を受けている人たちが、更に自分たちの中でも更なる差別を生むという現実等についても、
正に率直です。
日本の常識は世界の非常識、などという人もいますが、
一般的に考えうる非常識という枠を、完全にぶっ飛んだ非常識が、
世界中に、実は溢れかえっています。
要は、それに気が付くかどうか。
そういう事じゃないでしょうか。
読んでみるまで、考えもしなかったような、メディアからは殆ど入ってこない現場の姿が、
この本からは垣間見る事ができます。